フィリップ・リーヴ『移動都市』(安野 玲訳、創元SF文庫)

移動都市 (創元SF文庫)

移動都市 (創元SF文庫)

 評判は耳にしていたのですが、読んでいなかった本。噂にたがわず面白かった。
 移動する都市同士が食って食われてを繰り返す異形の未来、最古の移動都市ロンドンに住む孤児の少年トムは冒険を夢見ながら、現実には史学ギルドの見習いとして博物館で下働きをする日々を送っていた。ロンドンが久しぶりに獲物を見つけた日、敬愛するギルド長の助手として獲物の検分をする作業の途中、謎の少女へスターによってギルド長が殺されかけるという事件に遭遇する。そのことが彼の運命を大きく変えることになるとはしらず、へスターを追いかけるトムであったが……
 途中で、ちょっと読みにくいなあと思うところはあったけれど、最後のクライマックスの所は本当に面白くて一気に読んでしまった。話を構成する要素を一つ一つ取り出してみると、特に目新しいところは無いはずなのに話に引き込まれてしまうのは、やはり舞台設定の妙というものでしょうか。何も無い荒野をグロテスクなまでに機械化された都市が移動していく様を想像すると、それだけで笑えてきます。
 続編がちょうど出たところなので、次はそれを読む予定。